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2019年9月16日 (月)

Apache Wicketを使ってみる[4] -認証/認可編-

0. Wicketで認証/認可を扱うには

wicket-auth-roles というdependencyが必要。

<dependency>
  <groupId>org.apache.wicket</groupId>
  <artifactId>wicket-auth-roles</artifactId>
  <version>8.5.0</version>
</dependency>

1. Wicketでの認証

通常の WebApplication に認証情報を処理できるような拡張が施された AuthenticatedWebApplication と、認証処理と認証情報のセッションストアへの格納を行う AuthenticatedWebSession で構成される。

二つとも abstract なので、使うには継承したうえで実装しなければならない処理がある。

AuthenticatedWebApplication AuthenticatedWebSession
  • protected Class<? extends WebPage> getSignInPageClass()
    サインインページを構成するクラスを返す
  • protected boolean authenticate(String username, String password)
    ユーザー名とパスワードから認証を行う
  • protected Class<? extends AbstractAuthenticatedWebSession> getWebSessionClass()
    アプリケーションで使うセッションストアのクラスを返す

上記のユーザーガイドからの抜粋をKotlinで書いてみると、こんな感じになる。

  • セッションストアクラス
class BasicAuthenticationSession(request: Request) : AuthenticatedWebSession(request) {
  override fun authenticate(username: String, password: String) : Boolean {
    // ここで認証処理を行う
    // 通常であれば、DBアクセスしてユーザーの有無やパスワード比較とかをする、はず
    return username == password && username == "wicketer"
  }

  override fun getRoles() : Roles {
    // ロールベースのアクセス制御用に、ログイン中ユーザーのロールを返す
    // 通常であれば、セッションストアのユーザー情報からロールを引いたりする、はず
    return Roles()
  }
}
  • アプリケーションクラス
class WicketApplication() : AuthenticatedWebApplication() {
  override fun getHomePage() : Class<out WebPage> {
    // いわゆる「スタートページ」を構成するクラスを返す
    return HomePage::class.java
  }
  override fun getWebSessionClass() : Class<out AbstractAuthenticatedWebSession> {
    // アプリケーションでつかうセッションストアを返す
    return BasicAuthenticationSession::class.java
  }
  override fun getSignInPageClass() : Class<out WebPage> {
    // いわゆる「ログインページ」を構成するクラスを返す
    return SignInPage::class.java
  }
}
  • サインインページ
class SignInPage() : WebPage() {
  private var username: String = ""
  private var password: String = ""

  override fun onInitialize() {
    super.onInitialize()

    // ログインフォームを構成するStatelessForm
    val form: StatelessForm<Unit> = object : StatelessForm<Unit>("form") {
      override fun onSubmit() {
        if (username.length == 0) {
          return
        }

        // 認証処理を呼び出し、認証成功のときは前ページで設定されたリダイレクト先へ遷移する
        val authResult = AuthenticatedWebSession.get().signIn(username, password)
        if (authResult) {
          // ここではそのままリダイレクトしているが、ここでユーザーロールのチェックとかをはさむ、はず
          continueToOriginalDestination()
        }
      }
    }

    // ModelとTextFieldをformに追加する
    form.model = CompoundPropertyModel(this)
    form.add(TextField<String>("username"))
    form.add(PasswordTextField("password"))

    add.(form)
  }
}

サインインページのデフォルト実装はあるけれど、同じくデフォルト実装のパネルと組み合わせて使う想定のようで、自力で書くのと大差ないかも....

2. 途中で認証をはさみたいときは

「トップページとかは普通に見れるようにするが、あるページは会員だけに見せたい」といった場合、途中でユーザー認証を行い、認証に成功したらユーザーがもといたページに戻す、といった処理をやることになる。

そういった場合は、以下の二つの方法をとる、とのこと。[出典]

いずれも、実行時に遷移前の状態をセッションストアに保存したあと、認証に成功した場合認証前の状態に復元してくれるが、認証ページへの遷移直前に RestartResponseAtInterceptPageException が内部的にスローされてページ遷移するので、以後の処理は行われなくなる。

3. Wicketでの認可

いわゆる処理に対する権限チェックである。先ほどの例で出てきた AuthenticatedWebSession#getRoles() も、認可に関する処理の一つ。
「ログインしているか否か」も、認可の範囲に入る模様。

基本処理は IAuthorizationStrategy で規定されている

boolean isActionAuthorized(Component, Action) アクションが許可されているかどうかを返す。
boolean isInstantiationAuthorized(Class<T extends IRequestableComponent>) 指定されたコンポーネントをインスタンス化できるかどうかを返す。
boolean isResourceAuthorized(IResource, PageParameters) リクエストのパラメータが、リソースへのアクセスが許可されているかどうかを返す。

だが、すべてを許可するALLOW_ALLという実装のほか、ページ単位のチェックを行う規定処理がすでに組み込まれている。個人的には、一番しっくりきたのがロールベース戦略として紹介されている MetaDataRoleAuthorizationStrategyAnnotationsRoleAuthorizationStrategy だった。
それぞれ、用途的には以下のような違いがある。

MetaDataRoleAuthorizationStrategy アプリケーション起動時に、あらかじめ使用可能な権限をページごとに列挙しておく
AnnotationsRoleAuthorizationStrategy ページクラスに対し、アノテーションで権限を宣言していく

両者とも一長一短ではあるけど、たとえば、 AdminOperatablePage というページに「サインインしていたら表示可能、スーパーユーザーなら中のFormを操作可能」という権限を設定する場合、

  • MetaDataRoleAuthorizationStrategy のばあい
class WicketApplication() : AuthenticatedWebApplication() {
  override fun init() {
    securitySettings.authorizationStrategy = MetaDataRoleAuthorizationStrategy(this)

    // ログインしていたら "AdminOperatablePage" はインスタンス化を許可
    MetaDataRoleAuthorizationStrategy.authorize(AdminOperatablePage::class.java, "SIGNED_IN")

    // adminForm というコンポーネントは、"ADMIN"なら操作可能にする
    // "ADMIN"でないときはロックされる
    MetaDataRoleAuthorizationStrategy.authorize(adminForm, Action.ENABLE, "ADMIN")
  }
}
  • AnnotationsRoleAuthorizationStrategy のばあい
@AuthorizeInstantiation("SIGNED_IN")
@AuthorizeAction(action = "ENABLE", roles = {"ADMIN"})
class AdminOperatablePage(params: PageParameters) : WebPage(params) {
  // @AuthorizeInstantiation で "SIGNED_IN" を持つ場合にインスタンス化を許可
  // ここの @AuthorizeAction は、ページ全体に効果がある
  ...
}

....といった感じになるはず。

なお、権限は AuthenticatedWebSession#getRoles() で取得されるので、先ほどのセッションストアクラスを書き直してみると、

class BasicAuthenticationSession(request: Request) : AuthenticatedWebSession(request) {

  override fun getRoles() : Roles {
    // ロールは中身がHashSet<String>なので、条件に応じたロール識別文字列をaddしていく
    // @see https://ci.apache.org/projects/wicket/apidocs/8.x/org/apache/wicket/authroles/authorization/strategies/role/Roles.html
    val resultRoles = Roles()

    if (isSignedIn()) {
      // たとえば、サインインしていたら"SIGNED_IN"をおく、とか
      resultRoles.add("SIGNED_IN")
    }
    if (username == "superuser") {
      // スーパーユーザーだったら"ADMIN"を置く、とか
      resultRoles.add("ADMIN")
    }
    // このほか、ユーザーのオブジェクトを保管しているなら、そのオブジェクトにぶら下がっている
    // ロールをaddしていくことになる、はず

    return resultRoles
  }
}

...といった具合になるはず。

4. 認可に失敗したときは

認可に失敗したとき、デフォルトでは

  • ユーザーがサインインしていないときは、既定のサインインページへ遷移させる
  • サインインしているがコンポーネントが認可できない場合は、 UnauthorizedInstantiationException がスローされる

....という挙動だが、カスタム処理にしたい場合は IUnauthorizedComponentInstantiationListener というイベントリスナがあるので、これの中で処理する。

  securitySettings.unauthorizedComponentInstantiationListener = IUnauthorizedComponentInstantiationListener {
    // 認可失敗を処理する "AuthWarningPage" というページをレスポンスにする
    it.setResponsePage(AuthWarningPage::class.java)
  }

ロールの検証を追加するなら、こんな感じになるはず。

  securitySettings.unauthorizedComponentInstantiationListener = object : IRoleCheckingStrategy, IUnauthorizedComponentInstantiationListener {
    override fun onUnauthorizedInstantiation(component: Component?) {
      // 認可失敗を処理する "AuthWarningPage" というページをレスポンスにする
      component!!.setResponsePage(AuthWarningPage::class.java)
    }

    override fun hasAnyRole(roles: Roles): Boolean {
      // 指定ロールが見つかったらtrueを返す処理を書く
      var result = roles.hasRole("ADMIN")
      return result
    }
  }

まぁ、このあたりはデフォルト実装でもどうにかなるレベルなので、やるかどうかはケースバイケースか。

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